プロローグ

2/4
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
「まりん殿。ここは、拙者の後ろに隠れて……」 「は、はい!」  レーソスに言われる前に、すでにまりんはレーソスの逞しい背中の背後へと身を隠していた。「敵」は、レーソスの目の前で、ぶるるるる……! と激しく荒々しい息を吐いている。その獰猛そうな見てくれからして、まりんがリルの村でヌシおばさまからもらった「飛び出すナイフ」では相手にならないのは明白だった。 「こいつは、かなり気が立ってるようだ。人間とばったり会って、そのまま立ち去ってくれればと思っていたが、どうやら戦うことになりそうだな」  えー、やっぱり? まりんは、この世界で始めたこの冒険で、初めて遭遇した「敵」の姿に、レーソスさん大丈夫かしらでもレーソスさんならきっと大丈夫よね、そうよね?? と、ハラハラするばかりだった。  ――「暴れイノシシ」が現れた!―─  レーソスいわく「かなり気が立っている」イノシシは、前足で土を掻きながら、今にもこちらに飛び掛らんばかりの勢いだ。森の中の「けもの道」を歩いてるからって、ほんとにケモノが出てこなくってもさあ。しかもいきなり、こんな怖そうなのが! まあ、いきなりスライムみたいな「ふにゃっ」としたのが出てきても、意表を突かれ過ぎて「おっとっと」とか思うだろうけどさ。リアルな冒険って、こっちのレベルにかまわず、こんなリアルで強そうな「敵」が最初から出てきちゃうのね……! 「森の中の裏ルートを行くということは、拙者を追っている兵士に見つかる可能性は低いが、こういった野生動物には出くわすことがある、ということだな。うむ」  ……。そーーいうーーこと、かーー!! 確かに元の世界でやってたゲームでも、森とか沼とかに入ると、平地を歩くより強い敵が出てきたりするもんね。「森の中のけもの道ルート」を選んだから、最初から強そうな「敵」が出てきちゃったのね。うるるるる。  そんなまりんの嘆きを他所に、レーソスは目の前のイノシシにじっと集中していた。イノシシも同じく、レーソスの動きをじっくり見極めているかのようだった。そして。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!