0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
30秒ほどで到着したのは視聴覚室の前だ。
「え? ここが部室なのか?」
「視聴覚室だ」
いや、それは見ればわかる。
アダチはカギがかかっていることを確認すると、ポケットから針金を取り出した。
部室ではないということだな。
部屋の電気をつけたアダチは入口近くの机でさっそく10円玉を回した。
5回やって、3-2でアダチの勝ち。
「いや、これって単に 10円の表と裏が出る確率だろ」
「たしかにその通り、今やったのはただの運まかせだ。
運部のメンバーはそんな事はしない」
「運部って何人いるんだよ?」
「ボクと2つ上に先輩がひとりだ」
アダチとマサシは高校二年生だ。2つ上ということは・・・留年?
「先輩は3月に卒業したけど、ちょくちょく遊びに来るんで実質部員は2人だな」
なんだよ「実質」って。
スマホの料金みたいな言いぶりにいぶかしい表情を浮かべるマサシを気にも留めずにアダチはポケットから何やら取り出した。
「ボージョボー人形って知ってるか?」
ボロボロの人形だかゴミくずだかわからないそれをマサシに押しつけるとアダチは続けた。
「幸運のお守りなんだが、モノは何だっていい。要は精神の問題だ」
アダチは自分の胸を軽く叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!