先輩

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「えーと、、名前なんだっけ?」 「住田です」 「住田クン。 入部迷ってるようだが、自分のチカラはできるだけ正確に把握した方がいいぞ。  今回はたかが 500円玉が倒れただけの話だが、運ってのは今後の人生すべてに関わってくるものだ」 ミナトは熱く語りだした。 「たとえば大人になったら株取引とかやるだろ? あれだって結局は運なんだ」 「えー、そんなことないでしょ」 「いや、もちろん投資についてはいろんな知識も必要だしテクニックも学ばなきゃいけない。500円玉転がすのとはワケが違う。  ウォーレン・バフェットって知ってるかい? 投資王と呼ばれる資産家だ。  彼が成功したのは投資に関するするどい判断力を持っていたからだ。  しかし判断力ってのは未来を予言する力じゃない。いつだって失敗するリスクがつきまとうんだ。  10回投資すれば10回分失敗するリスクがある。  投資王と呼ばれる人物がこれまでに何度リスクと向かい合ってきたかわからないが、  結局は勝ち残った結果 今の成功があるってことだ」 マサシは話についていけてない。 「身近な例で言えば、スマホゲームのガチャだってそうだ。あれも投資だろ?  常に爆死するリスクを伴っている。 こっちは投資と違ってテクニックもへったくれもない。  リスクを減らすためにはどうしたらいいと思う?」 このレベルの話であればマサシにも理解できる。 「そう、運だ」 ミナトの熱弁とアダチの不敵な笑み、そしてよく知らないウォーレンなんとかも加わってマサシの心の扉は今まさにこじ開けられようとしていた。 「ガチャッ」 そのとき視聴覚室のドアが開いた。 「あれ、開いてるぞ?」 2人組の男子が DVDのパッケージを手に入ってきたのだ。 「あ・・・ あれ誰だっけ?」 ひとりがミナトを指さしながら記憶をたどっていた。 「あれだよ、ミナト先輩だよ」 もうひとりは名前を思い出したようだ。 学年違いで名前が知られている。有名人ということか。 「あーーーー、ミナト先輩ね。思い出した!  あの防犯研究会だっけ? 通称「詐欺部」の!」 --- END -----
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