1人が本棚に入れています
本棚に追加
ご主人の膝はいつも取り合いである。
大抵は私が勝つが、時々先をこされてわりこむのだが、あいつはそんなとき牙を剥いて唸るのである。
小さい頃はこちらも応戦したが、年月が過ぎて体が疲れやすくなってきた最近は、譲ることを覚えた。
ご主人と一緒に散歩するとき、ご主人にそっくりな生き物がこんなことをいう。
「かわいいわんちゃんですね」
どういう意味かわかるすべもないが、ご主人は喜ぶからいいことなのだろう。
「ミニチュアダックスだ~」と離れたところから言われるが、ますますもってなんのことかはわからない。
ご主人の膝を取り合うあいつは、自分よりあとから家にやって来た。
それまで私はご主人が家を日中出ていくときは寂しいものだった。
あいつが来てから寂しさはなくなったが、代わりに日中過ごす四角い場所が狭くなった。
お互い雌というわけで、似たところもあった。
しかしご主人のことを腹を出して呼び込むあいつは、よくかわいがられる。
撫でられるのは好きだ。
しかし、自分から求めていくのはしゃくだし、そうは簡単には行かない。
そんなわけであいつはお腹を撫でられている。
イライラする私はそこへ割り込んでいく。
「仲良くしなさい」
ご主人の言うことはなんとなくわかるが、私だけをかわいがってもらいたいものだ。
あとからやって来て小さかったあいつは、いつの間にか同じぐらいの大きさになった。
ただ、散歩では歩くのはとても遅い。あるいはひたすら走っていってしまう。
「お前はしっかりついてきていいな」
ご主人が誉めているのがわかる。
あいつに散歩力では負けることはあるまい。
最初のコメントを投稿しよう!