いつも横にいるあいつ

2/2
前へ
/6ページ
次へ
ご主人の膝はいつも取り合いである。 大抵は私が勝つが、時々先をこされてわりこむのだが、あいつはそんなとき牙を剥いて唸るのである。 小さい頃はこちらも応戦したが、年月が過ぎて体が疲れやすくなってきた最近は、譲ることを覚えた。 ご主人と一緒に散歩するとき、ご主人にそっくりな生き物がこんなことをいう。 「かわいいわんちゃんですね」 どういう意味かわかるすべもないが、ご主人は喜ぶからいいことなのだろう。 「ミニチュアダックスだ~」と離れたところから言われるが、ますますもってなんのことかはわからない。 ご主人の膝を取り合うあいつは、自分よりあとから家にやって来た。 それまで私はご主人が家を日中出ていくときは寂しいものだった。 あいつが来てから寂しさはなくなったが、代わりに日中過ごす四角い場所が狭くなった。 お互い雌というわけで、似たところもあった。 しかしご主人のことを腹を出して呼び込むあいつは、よくかわいがられる。 撫でられるのは好きだ。 しかし、自分から求めていくのはしゃくだし、そうは簡単には行かない。 そんなわけであいつはお腹を撫でられている。 イライラする私はそこへ割り込んでいく。 「仲良くしなさい」 ご主人の言うことはなんとなくわかるが、私だけをかわいがってもらいたいものだ。 あとからやって来て小さかったあいつは、いつの間にか同じぐらいの大きさになった。 ただ、散歩では歩くのはとても遅い。あるいはひたすら走っていってしまう。 「お前はしっかりついてきていいな」 ご主人が誉めているのがわかる。 あいつに散歩力では負けることはあるまい。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加