のんきなあいつのいない日

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のんきなあいつのいない日

長い長い時間を、結局一緒に過ごした。 ご主人がいない時間はあいつと二人。 暇なときは頭を舐めて毛をとかしてやったが、嫌がってうなり声をあげられた。 わがままなヤツだ。 いつかご主人の膝を独占するときが来る。 そう想像して過ごすのだが、なかなか叶うようには思えない。 図太い神経のあいつは、長生きするんだろう。 ある日ご主人は、久しぶりに私たちを温かいお湯のなかで、泡立てた。 これだけはなんの意味があるのかわからない。 体に甘い心地悪い甘い匂いがつくし、嫌なものである。 そこから出されると、毛みたいなもので体に水を吹き取られ、温かい風をあてられる。 それでだいぶ楽になるが、最後は私たちは部屋のなかをかけまわって自分で乾かすのだ。 あいつは、ソファーの上で走り回った。 そして、飛び降りたとき。 痛々しい声をあげた。 私は一瞬おどろいたが、すぐにご主人が来た。 「どうした?」 すくんでいるあいつ。 ご主人は少しあいつのことを触っていたが、抱き抱えて四角い場所に入れた。 私もなかに入った。 その夜、あいつは一晩中鳴いていた。 次の日、ご主人が四角い場所の扉を開く。 私は餌を求めて飛び出した。 走り回っていると、何かが足りない。 あいつは出てこない。 ご主人が抱き抱えて四角い場所からだすと。 あいつはだらしなく、後ろ足を伸ばして、前足だけで動いた。 しかし、ゆっくりして、いつもの勢いはまったくない。 「どうしたの? 足が動かない。。」 ご主人のとても悲しい顔が、そこにはあった。 その日から、私とご主人の二人になった。 あいつはご主人にどこかに連れていかれて、帰ってきたのはご主人一人。 何が起こったのかわからなかった。
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