水色の雪景色

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水色の雪景色

 真っ白な雪景色の向こうに、鮮やかな水色の空が広がっていた。  見渡す限りの雪原と、遠くにうっすらと見える白い山。大きな建物が無いここから見渡す空はとても広くて、その透き通るような青さに、さっきまでの吹雪が嘘だったのではないかと思えてくる。眼下に広がる田園では、収穫を終えたあとの稲穂が雪化粧を帯び、吹き抜けてくる冷たい風に揺れて、優しい日光を受けながらきらきらと輝いていた。  古い木製の駅舎がある小さな駅のホームで、私は肩に積もった雪を手で払った。快晴と穏やかな日差しに反して、肌に触れる空気と肩の雪はとても冷たく、手袋に染み込んだ水分がきりきりと指先を凍えさせる。  私はそこで、一人の女性と会った。  はじめ、その女性がホームに立っていることに気付かなかった。屋根も無い小さなホームで、山沿いに伸びる雪に包まれた木の下で、その女性はカメラを線路の向こうの雪景色に向けていた。 「あの」  声を掛けると、その女性は手元のカメラから顔を離して、不思議そうに私を見た。 「汽車、いつ来ますかね」     
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