scene 3 私立松藤学園高等学校 ー影のように寄り添いて

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scene 3 私立松藤学園高等学校 ー影のように寄り添いて

「戻ってこられないと思ったら、こちらでしたか」 未だ賑わう体育館の喧噪をよそに、ひっそりと静まり返った本校舎2階にある松藤学園生徒会室。送別会の進行を他の役員に任せた弐年生の松葉晴美(まつばはるみ)は、何気なくその部屋に来て参年生の桑園真寿見(くわぞのますみ)を見つける。 「見つかっちゃった」  まるで幼い子供のようにおどけてみせる桑園の、さっぱりと切られた髪。全国有数の進学校、松藤学園では珍しい色物キャラを演じた桑園は、最後までそのキャラを貫くが如くつい先程、送別会において断髪式を行ったのである。席を立って舞台まで押し寄せた女子生徒たちが悲鳴を上げる中、最初にハサミを入れたのはもちろん松葉である。  進行する式の最中を抜け出した桑園は、別室に呼んでいた美容師にざんばら髪を整えてもらい、今はまるで七五三のようだと松葉にからかわれる。 「それって、可愛いってこと?」 「気持ち悪いこと言わないで下さい」 「男ぶりが上がって惚れ直した?」 「自惚れ死にして下さい」 「もう、素直じゃないんだから」 「先輩こそ、こんなところでセンチに浸るなんてらしくありませんね」     
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