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scene 1 私立松前学院高等学校 ー金村伸晃の災難
中央、東西南北の五つの地区に分けられた桜花島内。その中央区のほぼ中央には桜花大講堂を擁する広大な桜花中央公園が広がり、その東側に私立松前学院高等学校はある。
「1年3組金村君、至急生徒会室まで」
そんな校内放送が入ったのは、丁度金村伸晃が登校してきてすぐのことである。
私立松前学院高等学校1年3組の教室はいつもの朝のように雑然としており、登校してきた金村伸晃は見掛けるクラスメイトと挨拶を交わしながら自分の席に向かう。そして机の上に鞄を置き、コートを脱ごうと襟をつかんだところで聞こえてきた校内放送に、思わずスピーカーを見上げる彼の顔が歪む。
「……この声……長峰先輩?」
すっかり浮かれた女生徒の声は2回、同じことを繰り返して放送を終える。すぐさま周囲にいたクラスメイト数人が笑いながら金村に近づいてきて、口々に声を掛ける。
「金村、ご指名だぞ」
「ほら、早く行けよ」
「先輩、首を長くして待ってるぞ」
口笛まで吹いて冷やかすクラスメイトに、呆然と立ち尽くしていた金村は我に返り、すぐさまばつが悪そうに 「行くわけないだろ」 と口を尖らせる。
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