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その松藤学園が、もし自ら 「桜花最凶の貧乏クジ」 を引くことを選んだとしても、中央区をとりまとめる央都・英華の差し金ではないかという憶測は瞬く間に桜花中に広まり、さらなる波紋となって混乱させることは間違いない。それこそ黒薔薇の女王陛下の思う壺である。
わかっていてその愚を犯せるかと問われれば、東山の答えは 「否」 である。選択の余地のない問いに、東山は悔しさを噛みしめる。
「裏央都・松藤」
忌ま忌ましさのあまり思わず舌打ちをする東山に、有村の厳しい叱咤が飛ぶ。
だがそれでも東山は抗議を続ける。彼は、それこそが自分がここにいる理由だと思っているから。
「今の央都は英華だ。公然とは言え、裏は裏。松藤が央都を差し置いて出しゃばるとは思えない。桑園はそこまで見越し、今年度の央都を譲ったのかもしれない」
私立松藤学園生徒会会長、桑園真寿見。実直な椿と違い、その柔和な容姿で周囲を惑わし続けた彼が、本当にそこまでを考えたかどうかはわからないけれど、考えていたとしてもおかしくはない人物である。
「あの変質者」
「お前も桑園のうわべに騙された口か? そんな調子では、奴の代行になっているあの2年にしてやられるぞ」
「会長同士の小競り合いは花園に任せます。
俺の役目は雑魚を叩き潰すことですから」
雑兵を叩き潰し、大将を敵将まで辿り着かせる。それが自分の役目だと東山は言う。
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