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わざとだろうか。椿は殊更冷ややかに言う。
「友情ではありません。理由はたった今、述べました。俺程度では克也や花園ほどの票は望めないことはわかっています。
ですが適材適所で言うなら、俺しかいないじゃありませんか。もちろんやるからには、負けるとわかっていても全力で戦います」
それこそわずかでも望みがあるのなら、勝ちを取りに行く。なんとも東山らしい主張に、有村は仏頂面を崩さなかったけれど、小さく息を吐く花園はわずかに口の端をほころばせる。
「俺は英華高生です。その意地にかけて、精一杯戦います」
東山の宣言に、しばしの沈黙が流れる。ただ何もない、本当に静かな沈黙である。
「……試すようなことを言って済まないと思っている」
ほどなくその静けさを乱さぬよう、椿はゆっくりと話し出す。
「お前たちを信用していないわけじゃないが、事後を託すにはあまりに大きすぎる。
かと言って卒業を以て桜花を去る、これは決して破られぬ桜花の理だ。どれほど後ろ髪を引かれようと、俺たちは桜花を去らなければならない」
「俺たちも同罪です。入都したばかりで何もわからなかったとは言え、間違いなくあの総代に一票を投じました。それは紛れもない事実です」
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