0人が本棚に入れています
本棚に追加
その功罪を贖うために残された期限はあと1年。どれほどのことが出来るかわからないけれど、出来る精一杯をしなければならない。そういう花園の言葉に椿はゆっくりと頷く。
「松藤が動けない以上、お前たちの中から候補者を出すのが一番の方法だと思った」
けれど女王陛下の後始末のため、むざと後輩を犠牲にするのも忍びない。彼なりに悩み、やむなくとった行動だろう。
「俺の立場でこんなことを言うべきではないとわかっているが、本当は誰でもいいと思っている。今川を確実に落選させ、あの総代の支配を完全に断ち切ることが出来るのなら誰でもいいんだ」
だが失敗は許されない。だから彼は最後の最後まで悩んだのである。
「これだけは言っておく。姿形に惑わされるな。俺たちはあの総代の『藤林院寺』という名に惑わされたが、本質は常日頃に顕れるもの。
『藤林院寺』であっても誰もが桜花のためを思うわけでもないが、逆も然り。花園と有村は直に見ているが、あの小さな媛がいい例だろう。桜花におらずとも、間違いなく現状を憂えておられた。
名は所詮、集団において個を判別するためのものに過ぎない。心を澄まして本質を見極めれば、自ずと取るべき道は開ける。その道にこそ、お前たちの戦う理由はある」
そう言った椿は、改めて東山を見て続ける。
「お前も、決して捨て駒になっていいわけがない。
最初のコメントを投稿しよう!