scene 2 私立英華高等学校 ー明澄の道

16/17
前へ
/94ページ
次へ
 面白くないと言わんばかりの東山が言う 「狸の孫」 とは、もちろん桜花理事会副長を務める天宮葵茜(あまみやきせん)の孫、天宮柊(あまみやひいらぎ)のことである。  だが彼には彼の事情があるのかもしれない。あるいは本当に知らないのか、のらりくらりと執行部内の追及をかわしているという。 「狸の孫は所詮狸か」  仕方がないと言う東山だが、言葉とは裏腹に表情は不満そのもの。 「定例の報告会とは別の日、それも大評議会と同日に行われたこともあり、執行部も懸念してます。推測ではありますが、理事会が動くとすれば新年度。入都式以降と思われますが、執行部はすでに理事会の動向を注視しています」 「すでに執行部が動いているのなら余計なことだったかもしれん。  理事会相手に必要ないと思うが、英華を動かすことを容認する。必要であれば使え。  先にも言ったが、総代候補はお前たち以外でもかまわない。お前たちが擁立を望む人物なら、俺もその生徒を信じよう。全力で戦え。  必要に応じて全校生徒の動員を認める。人選、及びその判断、動員の全権は花園に一任する。  俺からは以上だ」  言って椿が立ち上がると、3人の後輩も立ち上がる。 「お前たちの善戦を祈る」  そう椿が言うと、彼の後を受けて代行を務める花園が姿勢を正して言う。 「私立英華高等学校生徒会を代表して申し上げます。3年間、ありがとうございました」     
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加