scene 1 私立松前学院高等学校 ー金村伸晃の災難

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 この期におよんで何か用かとシラを切ろうとする金村だが、古城は大股に歩み寄ると金村の、コートを脱ぎかけた腕を取る。 「いいから来なさい」 「えっと、あの、コートぐらい脱がせてくれても……」  あまりに唐突すぎるその登場に、他に言い訳が思いつかなかったのだろう。ものの1分も稼げないような言い訳をする金村だが、古城はその1分に満たない言い訳すら認めない。 「いいわよ、着たままで。どうせ会長が脱がしてくれるから」  そう言ってにやりと笑うのを見て、金村の背筋に悪寒が走る。 「まぁコート以外も脱がしてくれるかもしれないけど」 「嫌ですよ!」  当たった嫌な予感に、思わず古城の腕を振り払おうとする金村だが、それを見越していたのか、古城も両手で掴んで放そうとしない。 「最後の奉公だと思って諦めなさい」 「なんで俺がっ?」 「男だったら、四の五の言わないでさっさと来る!」 「だったら俺、女になります!」 「はいはい、なってから言いなさい」  金村の必死の抵抗も虚しく、古城を応援するが如く薄情なクラスメイトたちは手を振る。 「頑張ってお勤めして来いよー」 「さらば、金村の童貞」 「骨くらいは拾ってやるからな」 「あの先輩、骨も残さず食いそうだよな」     
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