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それこそ獰猛な肉食獣並みだと笑って送り出すクラスメイトたち。さすがにそれは古城も聞き捨てならなかったらしい。
「そこまで悪食じゃないわよ、先輩も」
「古城先輩、問題はそこじゃありませんから!
お前らも、余計なこと言ってないで助けろよ!」
下手に助けに入ろうものなら巻き添えは必死。ここは黙って送り出してやるのが友情というものである。必死に助けを求める金村だったが、その声だけが虚しく教室に尾を引いて残った。
校内を、まるで見世物のように古城絵里に引き摺られるように連れてこられた生徒会室では、放送の声の主、長峰が金村の到着を今か今かと待ちわびていた。
「遅かったじゃない、ノブ君!」
今時流行らないぶりっこを全身で表現してみせるのが、私立松前学院高等学校3年生の長峰恭子。今年度同校生徒会会長である。
普通教室と同じサイズの生徒会室には、古城や長峰の他にも生徒会役員がいるのだが、彼女はその全員の存在を無視するが如く、金村の全身から溢れる嫌悪オーラさえ無視し、喜びを表現してみせる。
「放送入れてから何分待ったと思ってるのよ、もう!」
まるで焼き餅を焼くが如く、彼女のためにここまで金村の腕を掴んで引き摺ってきた古城から、少し乱暴にその腕を奪う。これではまるで、その労を労うどころか恋敵扱いである。
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