高貴な種族の誤算

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「親方ー!! ココはどうしたら!?」 「適当にやれッ! ショベルでただ穴を掘るだけなんだから俺に聞かなくてもわかるだろうが!!」 「オスッ!」 「親方ーー!!! 俺達はいつまでココを掘れば良いのです? そもそもこの穴はどこに繋がっているのですかい!?」 「知らん! 俺に聞くな!!」 「オスッ!!」 「親方ーーー!!!! 俺達の給料は…」 「うるせぇ!! 黙って穴を掘らんかいッ!!!」 「オスッ!!!」   「…そろそろ上の方向に向けて穴を掘り進んで行くか」 「オスッ!!!!」  …コイツ等「オス」ばかりだな。 それから緩やかな角度でゆっくりと上に掘り進んで行く事数年 「親方ー!」 「今度はなんだ!」 「そろそろ穴が開通しそうですよ! ほのかに明かりが」 「あぁそうかい。良かったな」  …ん!? 明かり??  部下の1人がヴァンパイアに向け喋る。瞬間ヴァンパイアの顔つきが変わった。 「おい! 待て止めろ! それ以上掘るな!」  ヴァンパイアは部下の動きを止める為、その穴を掘る腕を掴みに行く。  だが 「良し! 開通ーー!!」  時は既に遅く、光を遮っていた土は全て下に落ちトンネルの中に眩い太陽の光が差し込んでしまった。 「イヤー。お疲れ様です。本当に良かったですね。親方! ようやく工事が終わりましたよ。明日から休めますね。オス!」  最後の一堀を行った部下は後ろを振り返り、そこに居るであろうヴァンパイアに笑顔を向けて労いの言葉を発した。 「…アレ? 親方はどこに行った?」 「え? アレ? そういえば…。今オマエの真後ろに居たと思ったけど……消えたな」 「久しぶりの外の世界が嬉しくてそこから出て行ったんじゃないか?」 「そうだな。きっとそうだ! 親方らしいよな!」 「んじゃぁ俺達も後片付けして帰ろうぜ」 「そうだな! …ところでココはどこなんだ?」 「さぁ……」 「そう言えばオマエ等さぁ、給料ってもらった事あるか?」 「イヤ、無いよ?」 「俺も」 「んじゃぁ明日は溜まっていた給料を全部支払ってもらわないとな!」  笑いながら後片付けをする作業員達の遥か頭上では真っ白な光を帯びた太陽が眩く輝いていた。
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