猫は死に場所を探しに行った訳ではない。

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我輩は猫である。 どっかで聞いた台詞だって? 知らん!だって我輩は猫だから。 冷たい人間どもの作った石の壁の間から空を見上げれば、縦に伸びる大きく偉大な七つの星が見える。 北斗七星?知らんな。我輩は猫だから。 そのすぐ脇にひときわ輝く星がひとつ……。 死兆星?だから知らんと! はい、みなさんもご一緒に、我輩は猫だから。 みんな、あのひときわ輝く星が落ちてきそうだと言うけれど……違うなあ。 ある日を栄えに猫達は、空を飛ぶ能力を得られるんだ。 だから、あの星が近くに見えて当然だ! 我輩も、もうすぐだ。 きっと、あそこには緑豊かな楽園があるんだ。至るところに草が生い茂、木が生え、そよ風の心地良い楽園が……。 我輩はこんな石の惑星に生れ散々だった……、至るところ石の壁、石の地面、夏は熱いし、冬は冷たい。 土なんてちょこっとしかない、ちょっと広めの道の脇くらいか……。 あの道も酷い、白い線が引かれていてその中を硬くて冷たくて無表情な人間を乗せる動物が凄い速さで何頭も走っていく。 仲間が何匹も食われた……。 しかも奴等は残忍なんだ!噛みついたと思ったら前にぶっ飛ばして、その後必ず踏みつけて腸を引きずり出すんだ。見ていられないから我輩はいつもぶっ飛ばされた所で目をそらすんだ……。 食べ物も酷い。ほぼ人間の食い散らかした残しだ。 ちょっと臭いけど、でも、旨いからどうしても食べちゃうんだ。 その辺の黒い虫やネズミよりはましだし。 でも人間にばれると殴られたりするから、それもまた嫌だったなあ。 仲間の一人が人間からもらった飯で急にあわ吹いて死んだやつがいたな。 それ以来人間がくれる綺麗な餌は信用しないことにしている……ついつい旨いからどうしても食べちゃうんだけど……。 あの人間の女の子がくれたビスケットがうまかった。 食べる我輩を見てニコッとわらったからついついおかわりをねだってしまった、迂闊だった……。撫でられたくらいで何もなかったけど。
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