欲の深い人(副題:天国への道)

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 オレは金持ちになりたかった。バイトでためたカネで起業した。独学で習得した電磁気理論を発展させ、電装部品会社を設立・起業し、海外企業に照準を絞って取引し、ついに上場をはたし億万長者になった。独学だったがゆえに電磁気理論が独特で、製品が他社に真似されないのがよかった。すぐに金融資産を含め資産50億円余りになった。  しかし日本では個人金融資産5000万円以上を準富裕層、5億円以上を超富裕層というらしい。 「それって先進国の基準ではないよねっ」とオレは思わざるをえない。  オレは世界から見た富裕層を目指して頑張った。電磁気の研究もさることながらM&Aも積極的に取り入れ、会社の時価総額も500億円規模に成長させ、個人金融資産も100億円余りになった。それでも米中を見れば、アメリカにはマイクロソフトのビル・ゲイツ、アマゾンのベゾス(ともに資産10兆円以上)、上には上がいるものだな。中国だってテンセントのポニー・マー、鴻海グループ(フォックスコン)の郭台銘(ともに資産1兆円以上)。彼らがここにいたら。オレは小さな芥子粒だよ。 「向上心を忘れちゃだめだよねっ」とオレは苦笑した。「これじゃあさ、世界へ出ていくべきだよねっ」とオレは素直に考えた。  成功すればたたかれる縮小均衡の日本を脱出し、オレはアジア市場へ打って出た。香港の証券会社の助言・後ろ盾もあって、MITの教授からも見る角度が違うと賛辞を得た電磁気を応用した製品に磨きをかけ、M&Aで有望企業を取り込み、香港市場での上場にこぎつけた。そして今やアジアはもちろん欧米にも名の知れた有名企業のオーナーになったのだ。 「オレって幸せかなっ」と。
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