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《sec1 当直》
―― 黄泉が出現する、2時間ほど前。
「‥‥長、班長、葛城班長! 起きてください。そろそろ当直の時間ですよ?!」
「ん‥‥うん‥‥」
女性の声で眼が覚める。班員の紅一点、山喜だ。
ごそ‥‥
仮眠用のシーツを横にやり、ゆっくりと身体を起こす。
以前は『仮眠』と言われても緊張して容易に寝付けるものでは無かったが、最近は2分も時間があれば充分に寝付ける自信がある。
何処となく身体が重い。
ここ暫く、出撃回数が増えているせいだろう。疲労が残っている気がする。
元々、古武術の剣術派で師範代を務める程に鍛えられた身体ではあるが。
それでも自衛隊から選抜されて来ている他の班員から見れば、葛城の体躯はやや華奢にさえ映る。
「さぁさぁ皆さん、仕事ですよ! 早く、起きる起きる!」
パンパンと山喜が手を叩きながら、他の班員達5名を起こしに掛かる。
「コラ! 桂さん、ダメですよ! 仮眠室に煙管(吸殻入れ)は無いと、何回言ったらわかるんですか!」
無意識にライターを握ろうとする大柄な男を、山喜が目ざとく見咎める
「くそっ‥‥山喜、テメェはオカンかよ‥‥」
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