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『重さ』を感じるという事は、それだけ筋力が低下している現れだからだ。
そして、本日はまだ幸いにしてそこまでの重量感は無かった。
コーヒーの香りが漂ってくる。
官品の、安っぽくて甘い匂いだ。
葛城は枕元からスマートフォンを引き寄せ『ピンポイント天気予報』をチェックする。
今晩は‥‥晴れか‥‥。
「見事な夕焼けだなぁ‥‥」
海自出身の河本が窓から外を眺めている。
「出来れば『敵さん』もお休みしててくれると良いんですがね‥‥」
陸自でヘリの操縦を専門としていた呉井が、溜息をついた。
「ここんところ、続いたからな‥‥」
同じく陸自で装備の担当をしていた佐和山も、身体が重そうだ。
だがこればかりは『敵』の都合であり、自分たちでどうこう出来る問題でもない。
「コーヒー、入りましたよ!」
山喜が皆をテーブルに呼ぶ。
「とりあえず、一杯飲んで。それからヘリポートに向かいましょう!」
自分とて決して万全では無いだろうが、それでも山喜は健気に皆を鼓舞してみせた。
やがて夜が来て。
雑踏に揺れる街をドス黒く飲み込んでゆく。
闇に溶けた魍魎が、じっとその機を伺っている。
そしてこの夜は。
「‥‥葛城班、こちら司令室。 『黄泉』出現! 直ちに現場へ急行してください! ポイントはE-21地区」
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