chap 1『黄泉』襲来

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『重さ』を感じるという事は、それだけ筋力が低下している現れだからだ。 そして、本日はまだ幸いにしてそこまでの重量感は無かった。 コーヒーの香りが漂ってくる。 官品の、安っぽくて甘い匂いだ。 葛城は枕元からスマートフォンを引き寄せ『ピンポイント天気予報』をチェックする。 今晩は‥‥晴れか‥‥。 「見事な夕焼けだなぁ‥‥」 海自出身の河本が窓から外を眺めている。 「出来れば『敵さん』もお休みしててくれると良いんですがね‥‥」 陸自でヘリの操縦を専門としていた呉井が、溜息をついた。 「ここんところ、続いたからな‥‥」 同じく陸自で装備の担当をしていた佐和山も、身体が重そうだ。 だがこればかりは『敵』の都合であり、自分たちでどうこう出来る問題でもない。 「コーヒー、入りましたよ!」 山喜が皆をテーブルに呼ぶ。 「とりあえず、一杯飲んで。それからヘリポートに向かいましょう!」 自分とて決して万全では無いだろうが、それでも山喜は健気に皆を鼓舞してみせた。 やがて夜が来て。 雑踏に揺れる街をドス黒く飲み込んでゆく。 闇に溶けた魍魎(もうりょう)が、じっとその機を伺っている。 そしてこの夜は。 「‥‥葛城班、こちら司令室。 『黄泉』出現! 直ちに現場へ急行してください! ポイントはE-21地区」     
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