chap 1『黄泉』襲来

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「そうですね‥‥今回も『本体』ではなく、『コピー』の方のようです。残念ですが」 モニター班の男は、ゆっくりと首を横に振った。 ‥‥アマテラスが、捕獲されていた鴻池研究所から『遺失』して3年。 アマテラスによって『作られた』と思われる『ゾンビ』が、街中で暴れまわる災害が多発していた。 どういう方法なのか、目撃者が居ないので定かではないが。とにかく、アマテラスは何らかの方法で人間をゾンビに変貌させる。 そして、ゾンビ化した人間は他人を『食って』しまう。 いや、人間だけではない。 それが犬であれカラスであれ、動物なら見境なく『取り込んで』しまう。それも際限なく手当たり次第だ。 無論、取り込んだ事で質量は増大するが、暫くの間は『見た目の大きさ』を維持出来るようだ。 だが、それでも限界はある。 一定以上に『取り込む』と、ある時に突然『巨大化』を起こすのだ。しかもその姿形は人間の『それ』を留めることなく、完全に『怪物化』する。 もはやそこに『人間としての生』は無いが、さりとて『死者として沈黙』もしていない。 そのため『黄泉平坂(よもつひらさか)を彷徨うもの』という意味を込めて『黄泉(よみ)』と呼ばれている。     
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