君の後ろ姿が見たかった

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 君の後ろ姿が見たかった。  そう願う私はやはりどこかおかしいのだろうか。いいや、おかしいに決まっている。同性である君にこんな気持ちの悪い想いを抱いているのだから。  私はただずっと君の隣にいた。昔から、そう、物心もまだつくかつかないか分からない頃からずっと。だからこそ、君の全てを知っていると思っていた。  けれど、長い間隣にいた私には、君の後ろ姿が見られなかった。私は君の全てが知りたいのに、君は私に後ろ姿を見せようとはしなかった。  君は色々な人から好かれていた。それは友情的な意味であったり、時々恋愛的な意味であったり。  その現場に出くわしたのは偶然だった。私はいつもはいる君がいなかったから探していただけ。  耳を突き刺したのは誰よりも聞き慣れた君の声だった。 「ごめんなさい、他に好きな人がいるの」  君の槍に体を貫かれる。今だって、隣で笑う君の気持ちが知りたくて堪らない。君が隠している後ろ姿が見たかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!