ノスリという男

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 駅に近づくにつれて周りが賑やかになってきた。流石に駅前となるとこの時刻でも人の姿が多い。五階建てのビルに丸ごと入った量販店の店頭には派手な法被を着た呼び子が立っている。すっかり疲れ切っているようで、目の前を通る通行人に掛ける声にも今ひとつ張りがない。大方帰宅者の多かった時間に張り切り過ぎたのだろう。こういう職業も非テレパス向きなのかなとノスリは思いながら呼び子の前を通り過ぎた。  派手なネオンに交じって目に付くのはビルの側面を彩る映像である。電子看板だった。音声こそないものの通行人の目を引こうと派手な演出をして何事かを訴え続けている。通り過ぎたばかりの量販店のビルの側面にはホログラムで浮かび上がった暖房器具がゆっくり回転していて、今買うならばこの新モデルしかないと力説している。
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