ノスリという男

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 ノスリは虚無感に襲われた。その感じを払拭したくて隣のトビに話し掛けた。 「この電子看板って一晩中ついているのかな」 「さあどうでしょう。ビルの照明が落ちれば電子看板も消えるんじゃあないですか。でもビルの照明はいつ落ちるんでしょうねえ。今は保湿クリームか。あ、次は日本安全管理機構ですね。そろそろ新しくなってもいい頃ですけど」  駅ビルの電子看板が日本安全管理機構の広告に切り替わった。この日本安全管理機構の電子看板は日常にあるストーリー仕立てでよく更新されるため人気があった。これ目当てで電子看板を見続ける人もいるぐらいで、二人も他の電子看板よりも気に留めていた。二人は黙って冒頭の数秒を見ていたが、すぐにトビが頭を振った。内容は今までと同じものだった。
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