一カ年千人計画

2/57
前へ
/364ページ
次へ
 ノスリは思案する。ノスリにはこれ以上会員を増やすメリットが分からなかった。まさかオオワシの言うようにテレパスに抗議活動でもするというのか。あんなことは上辺だけの建前だとノスリは思っている。オオワシの立場ならばもっと分かりやすいものが得られるはずだ。例えば大きな集団の上に立ちたいという権力欲の充足であったり、サークルの実入りから少しつまみ食いをしようという不当利益の享受だったり。  ただ、そうだとしてもノスリにはオオワシを非難する気にはなれなかった。いくらトリノスの長と言っても報酬や役職手当といった特別な収入があるわけではない。それどころか会議の準備、後片付けといった細々した雑務をひとり担っているのだ。ノスリはそれを全くの無償でやれと言うほど無情にはなれなかった。
/364ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加