軛《くびき》

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 午後の公園のベンチに、ひとり本を読む男の子。 無造作な髪型に、詰め襟の学ランを身にまとっている。 歳は私と同じくらいだから、きっとこの公園の近くの高校の生徒なんだと思う。 顔立ちはイケメンかと問われれば、決して首を縦には振れないけど、 かといってブサイクかと問われたなら、私は全力で否定したい。 つまり、なんというかちょうどいい感じ。 賑やかな放課後の公園にもかかわらず、今日も静かに本を読みふける彼。 ーーそれが、私の初恋の人。  彼はこの時間になると、いつもこの公園のベンチで本を読んでいる。 と言っても、まだ半年なのだけれど、晴れの日も雨の日も春も夏も 彼はここで本を読む。 じゃあ、よっぽどの読書家なのかというと、ちょっと違うようで いつも同じお気に入りの本を読んでいる。 でも、私は彼と話をしたことがない。 もちろん、知り合いというわけでもない。 だから、話した事なんてない。 ーーただ一度、声をかけてもらっただけで。
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