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彼との出会いは半年前。
あの時も彼はこの公園のベンチで本を読んでいた。
その頃まだ新入生だった私は熱烈な勧誘に圧されて、
経験もないのに演劇部に入部してしまった。お芝居の事は何も知らない私と演劇経験者のみんな。その差は歴然で足を引っ張らないようにするのが精一杯だった。
かといって、辞めようにも部員の少なさからそれもできなかった。
私は少しでもみんなに追いつこうと『渚用』と書かれた台本を片手に、放課後はいつも公園で1人お芝居の稽古をしていた。
ーー孤独だった。
なかなかうまく行かず、苛立つ日もあった。
自分には全く才能が無い、と塞ぎこんでいくばかりだった。
……そう、あの日も。
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