2:side I

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「はぁー? 嫌だよ、この姿勢結構しんどいんだぞ」 体軟らかくないから、我に返って脚広げてるだけでも辛いことに気づく。 「股関節のストレッチにもなるだろ?」 悪びれた様子もない。 「ストレッチなんかしなくていい」 「体をほぐすこと自体は悪いことじゃないぜ、お前もジムに通ってるから分かるだろ」 もちろん。結婚を機に一緒に通うことになった、彼御用達の高級ジムに。そこのトレーナーにも体が硬いと言われたことがあったっけ。 「それに新たな体位の開発にもなるし」 ウインクしながら言うもんだから、せっかく納得しかけた気持ちが折れた。 「それ言いたかっただけじゃねーか」 「まぁまぁそう言うなよ、日本には数百年前から伝わる伝統の体位があるらしいじゃないか。なんだか50個近いと聞いたが」 「それは」 四十八な、と言おうとしてグッと飲み込む。本当にこいつの探究心というかなんというか。呆れてモノが言えない。 「いろいろなことに一緒に挑戦して、もっとお前のさまざまな顔を引き出したい」 そう目をキラキラさせながら言われると、なんだか無碍に断ることもできず……。 本当ダメだよな、俺。こいつが喜ぶことにノーと言えない。 「わかった。体がほぐれるまで待って……」 真っ赤な顔をなるべく見られないようにしながら、呟くので精一杯だった。 2:side I 終わり
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