3:side I

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3:side I

「それであいつに話聞きたいっての?」 バーに呼び出されたから何かと思ったら、バカみたいな頼みを聞かされた。 「そーなのー、絶対俺のテクニック不足に怒ったんだと思うのー」 「ぜってぇ違うと思う」 話聞いてる限り、カノジョに対するこいつの配慮のなさが原因だと思う。 「だってさぁ、そのあと連絡したけど返信こないし、会おうと思っても約束もできないんだよ」 「大体にしてその喧嘩っていつの話だよ?」 「おととい」 「最近も最近じゃねぇか! 誤差だよそんなもん! そんなに気になんだったら、家でも訪ねてって謝ればいいじゃねぇかよ」 そんなもん、俺の夫にテクニックを聞くのどうこうっていう話以前の問題だろう。 後輩は落ち着かない様子でキョロキョロとあちこちを見ると、唇を尖らせてカウンターに突っ伏した。 「そうなんだけどねぇ……。この間の俺とは違うっていうのをちゃんとこう、形にした上で謝りに行きたい気持ちもあるんだよ」 「はぁ」 「あと、あいつんちすげぇでっかいから行くだけでも緊張するっていうか」 「お前そっちだろ、足が向かない本当の理由」 「や、うーん、どっちも同じくらいっていうか」 どうも歯切れが悪い。
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