幻の本を求めて

4/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
そう思うと、タイムリープをしている自分が、とても悪いことをしているんじゃないかと不安になってしまう。 腕時計の歪んでしまった針…もう後一回しかタイムリープできないだろう。 次の一回は俺の時代に帰らないと、永遠に過去のさまよい人になってしまう。 もう少しだけ、この時代で井土居 芙蓉に関して何か調べられないかな? この時代なら井土居 芙蓉は生きているはずなんだけど、あんまり有名ではないのかもしれない。 死後、有名になる人も多いし。 音楽家や芸術家なんて大半がそうだし。 時代を先取りしすぎて、後になって価値が出てくるんだよな…。 何をどう探せばいいのか分からずに、辺りをぶらぶら歩いてみる。 俺のいる時代とは違いすぎて、何だか映画の世界にでもいるような気分になる。 歩いていると少し先に公園があるようで、少し休憩しようかと歩を進めた。 俺の時代の公園は緑もベンチも遊具すらない、地面もコンクリートかメタル板で、憩いも何もあったもんじゃないしな。 風に揺れる樹木に引き寄せられるように、公園に向かってまっすぐ進む。 周りを見ずに進んでいたせいで、横の方向から歩いてきた人にぶつかってしまった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!