ぜろ

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ナツは言う。 「たしかに、田舎は嫌だけど。 スーパー遠いし、本屋も隣街だし。 でも、いいこともあるよ。 見よ!!この大きな空を!! 何も障害物がないから、空が向こうより大きく感じるの!! 下を見たら、虫大量発生中だし道舗装されてないしで落ち込むけどね。 となりに、ハルがいるなら何とかなるかな。」 ナツはハルを引き寄せて抱っこする。 「、、、、オレはナツが許してくれるなら、ナツが嫁に行くまで側にいたい。」 「だから許すとか許さないとかないけどね。 てか、ハルは私のお父さんか!」 「ナツは、時々予想できないことを仕出かすからな。オレは5歳児を見守る保護者になった気分になる。」 「、、、、ハル、ぶん投げられたいの?」 「ナツ、真実を受け止められる大人になれ。」 私の腕の中でハルが笑う。落としたろか。 でもお腹にパタパタ当たるハルのしっぽは嫌いじゃないかな。 私達は、一緒に空を見上げた。 空は赤く染まりつつある。 青、白、橙、紫、赤、 様々な色のグラデーション。 元気になれそうな橙。 少し寂しげな薄紫。 これからも楽しいことも悲しいこともあるんだろうなぁ。 でも、腕の中のぬくもりがあるなら大丈夫だよね。 「、、、、キレイになったな。」 「はぁ?」 「いや、夕日に染まるナツが大人っぽく見えてだな。」 「、、、、さぁ、帰るか!!」 顔が熱い。なんだ、この破壊力。普段なら絶対に私のことなんて褒めないのに。こんな時に! 完全に不意打ちである。予想外である。 「ナツ、顔が真っ赤だなぁ。」 「真っ赤じゃないし!夕日のせいだし!」 「ごまかさなくてもいいだろう?照れるな照れるな。」 「照れてないし!ハルの口臭くて上向いてただけだし!」 私達は、ぎゃあぎゃあ騒ぎつつ山を下っていく。 あたたかい夕日の空に見守られながら。
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