さよならはみどりいろ

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さよならはみどりいろ

子どもの頃、わたしには格別にお気に入りの絵本があった。 『さよならはみどりいろ』。 それは、わたしの祖父、(いぬい)三太(さんた)が生前に自費出版した絵本だった。 残念ながらその絵本は、祖父が亡くなる少し前に版元である出版社が倒産したため、事実上の絶版になってしまったのだった。 当時、せめて在庫を引き取ろうとして祖父は奮闘したらしい。 でも、とうとう編集部と連絡がつかないまま、祖父は心臓発作でこの世を去ることになってしまった。 わたしがまだ4歳の頃の話だ。 両親がその事情を子どもにもわかるように噛みくだいて説明してくれていたので、その本がもうこの世に流通することのない貴重なものであることを、わたしは幼いながら理解していた。
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