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手元に残された一冊の『さよならはみどりいろ』を、わたしは毎日ランドセルに入れて小学校に持ち歩いた。
一言一句暗記してしまっても、ページがぼろぼろになってしまっても、何度も何度も読み返した。
その絵本自体が大好きだったし、うっすらと覚えている祖父のぬくもりがページを開くたびに蘇る気がして。
特に、自分があまり集団生活に向いていないことをうっすら自覚していた小学2年生のわたしにとって、『さよならはみどりいろ』は御守りのような役割を果たしてくれた。
クラスの女の子たちがみんな持っているキャラクターグッズの良さがわからず、いつのまにか流行に取り残されていることに気づいたとき。
ぼおっとしていて先生の話を聞き流し、翌日持ってくるべきものを家に忘れて怒られたとき。
ランドセルや机の引き出しに入れてある一冊の絵本の存在を思うだけで、心がほっと暖まる気がした。
おじいちゃんが寄り添ってくれている、と思えた。
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