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「いぬいみひろさま
こころゆたかなひとにそだってください
いぬいさんたより」
見開きの部分に油性ペンで記された、祖父のサイン。
出版時乳児だったわたしに敬称を付け、一人の人間として扱ってくれた祖父のことを、わたしはいつまでも心の奥底で愛し続けた。
そのサンタクロースのような名前も含めて、大好きだった。
祖父と過ごした幼い日々のおぼろげな記憶をなぞるように、わたしはその文字を小さな指先で何度も何度も撫でた。
『さよならはみどりいろ』は、サバンナで暮らすシマウマが主人公の物語だ。
群の中で一頭だけ、体に縞模様がなく、ただの白い馬として生まれてきた、マッシュ。
「おまえがいると、天敵のライオンやチーターに見つかりやすくて困るよ」
仲間に言われ続けて思い悩んだマッシュは、願いを叶えてくれると言われている魔法の木のもとへ行く。
「みんなと同じように、縞模様にしてください」
それなのに、翌朝目が覚めるとマッシュの体は緑色になっていた。
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