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「何だそれ、知ーらねえ」
健治はひとを苛立たせる声で言った。
「知ーらねえ。髪も茶色だし、変なの」
智成も同調した。
「隆生、遊ぶべ」
ふたりは隆生の腕をつかみ、わたしに背を向けた。
離れる直前、隆生は
「僕は、おかしいと思わないよ」
と、わたしにだけ聞こえる声で言った。
「あなたのそんけいするひとは誰ですか」
「あなたはしょうらい、どんな大人になりたいですか」
国語の授業で、先生が作文のテーマを告げた。
秋が深まり、冬の気配が訪れ始めた頃だった。
「俺、作文だーいっきれえ」
健治がいきなり音を上げて、先生に怒られている。
前の席に座る早苗ちゃんは、
「えー、看護士さんとかでいいのかなあ」
などとつぶやいている。
針のように尖らせた2Bの鉛筆の先を白い原稿用紙にあてながら、わたしはおじいちゃんのことを思った。
この世を去った後も、絵本を通じてわたしを支え続けるおじいちゃん。
わたしは絵が得意じゃないし、物語を考えるよりは読むほうがずっと好きだ。
絵本を作るのは無理でも、絵本を作るひとを支えるお仕事はできないかなあ。
小学2年生なりの精いっぱいの知識と想像力で、考えた。
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