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「・・・ん?」
タヌキのポンポは、タヌキ寝入りから目を覚ました。
「ここは・・・がっ!!」
ポンポは絶句した。
タヌキのポンポは図書館司書の康子の膝の上で、もふられていたのだ。
「タヌ、騒がないの騒がないの!!今さっきはゴメンね。」
康子は、 実はこのタヌキが化けるのが苦手なんだと知った。
それは、タヌキが読もうとした本のタイトルで解った。
「『化学』ねぇ。タヌ、『ばけがく』って思ったでしょ?私も『ばけがく』と、最近まで思ってたわよ。
この本、『かがく』って読むのよ。『かがく』。」
その事実を知った康子には、この図書館に侵入してきたタヌキが逆に愛おしく感じられたのだ。
しかしタヌキのポンポには、この『化学』の本は読まずにいられない本だった。
ポンポのタヌキ血脈では、元来『かがく』の知識を用いて『ばけがく』を身につける間柄だったからだ。
「いいわよ。タヌ。あんた名義の図書カード作ってあげるから、読みたい時にまた来てね。
『化学』の本は配置を変えて下の欄に置くようにするからねっ!!」
「わーい!!タヌキさんだ!!タヌキさんだ!!」
首に図書カードを入れたホルダーを掛けてやって来た、タヌキのポンポを児童図書館を家族連れで訪れた子供達が見てはしゃいだ。
タヌキのポンポは、『化学』の本を図書館で借りては読んでは返し、読んでは返しを繰り返すうちに・・・
「暫くあのタヌ、来ないねえ。」
図書館司書の康子は、図書を借りに来る利用者達を見回して頬杖えを付いた。
「本当にどうしちゃったのかな?タヌ。何かあったのかな・・・?」
康子は利用者の並びに、一人の小肥りな人を見てハッ!と気付いた。
・・・あの人は・・・いつぞやの・・・!!
その小肥りな利用者は、図書館に侵入してきたタヌキを追いかけてたら、本棚と本棚の間から飛び出して行った人と全く同じ風貌だったのだ。
・・・やっぱりね・・・。
・・・『化学』の本を読み続けて、やっと人間に化けるのが上手くなったんだわ・・・
・・・良かったね、タヌ・・・!!
・・・でもね・・・まだ図書館通いは必要ね・・・!!
康子は、『新しい化学』の本を借りて去っていく小肥りの人間の尻に、タヌキの尻尾が揺れているのを見詰めてきた。
~タヌキが読みたい本~
~fin~
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