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「よいしょ!!」
タヌキのポンポは、前肢の爪でお目当ての本の背表紙を掴んで何とか本棚から取り出そうと引き出した。
「うーん。爪を立てると、本の背表紙が傷が付くなあ・・・こうなったら、一か八か。だ。」
どろん。
「たーぬきさーん、たーぬきさーん出ておいでぇー。」
図書館司書の康子は、タヌキを追い払う為のモップを持っておどおどしく、何処かに隠れている筈の図書館に侵入したタヌキを呼び込み回った。
すると、
奥の本棚と本棚に挟まれた隙間から、人影がぬっと現れた。
「だあれ?あ、貴方は?!」
その小肥りな人影は、図書館司書の康子の姿を見るなり、ギクッとなった。
もじゃもじゃもじゃもじゃ・・・
・・・しまった・・・!!
小肥りな人影は、康子の目の前を猛ダッシュで駆け抜けていった。
「ちょっと!!図書館内は走らないでっ!!・・・全くもう・・・!!」
「ふぅ・・・ふぅ・・・危なかったぁ!!」
タヌキのポンポは図書館の一角の閲覧机に死物狂いで持ち出した本を置いて、椅子の上で踞って肩で息をしていた。
「さあ・・・読むぞ・・・!!」
ポンポは、机に身を乗りだし椅子の上を後ろ脚立ちして、前肢の爪で持ってきた本の表紙をペラッとゆっくり捲った。
「これを読まなければ・・・いっちょまえの『タヌキ』になれないんだ・・・!!
ここ本には、『タヌキ』が『タヌキ』として生きていく術が書いてあるって・・・仲間が・・・」
タヌキのポンポは、1枚また1枚と次々と本を捲っては、そこに書いてある文字列や掲載されている写真をまじまじと覗いていた。
「解らないよぉ。皆、この本を読んでいっちょまえの『タヌキ』に成長したの?!
難しいー!!俺の頭じゃ理解できねぇー!!」
タヌキのポンポは、頭を抱えて黙りこくっていると・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
後ろで恐ろしい殺気を感じた。
「山にさっさと帰れ・・・!!このタヌ公!!」
タヌキのポンポは恐怖の余り、その場で倒れてタヌキ寝入りしてしまった。
「にしてもあのタヌキ・・・この本を・・・?」
康子は、床に落ちた本を拾ったタイトルを見た。
『化学』
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