妖術放ち

2/2
前へ
/12ページ
次へ
妖術使い「姫の体に蛇が住み着いた。 してやったりクックックックッ微笑。」 妖術使いノロエは足早に去っていった。 老師(ろうし) 「現在姫の悲鳴は あちらこちらに。 鳴り響いているのは もうお分かりかな 諸君。 悪声に呪われし歌声は それはそれは聞き苦しい。 姫自信の 声が変化してしまって。 そこのボウズ。名を何と言う。 我名は頼(たの) 老師 「頼や、こういう ものも狂わせる 程の呪いじゃ。」 姫にはくれぐれも内緒じゃよ。 妖術をかけていった ノロエのことは。 ノロエは、もともと妖術を無暗に使うようではないのだ。 頼や姫の様子を見に行ってくれないか。 お駄賃渡しておこう。 頼や姫の呪いは 妖術だよ。 頼はひとやま越えて 姫のもとへ急いだ。 頼が辿り着くと 姫 「ひまじゃ、ひまじゃ、 ひまなんじゃ。」 「大蛇がからだじゅう、うろうろ はいつくばるのじゃ。」 「ひまなことはないんじゃ。またいっぴきまたいっぴきとやってきて、冷ややかな 舌で体のなかをペロッとしていくのじゃ。」 手足も何もない蛇じゃ。 姫「頼やひさしぶりに やってきたのか。 ここは姫のところじゃ。」 老師のところは よかったか。 頼「姫どの、頼はおだちんをもらった。」 姫はクックックックッと妖術に取りつかれた声で笑う。 そうか。頼は男だったな。おおきくなったら役にたつのじゃ。 姫と頼で何か 遊びをしようとおもったのじゃ。 姫はいま数をまともに 数えられないのじゃ。 お腹がピクピクじゃ。 耳のなかで ガシャガシャじゃ。 右に左にじゃ。 月夜にどうして 姫の声が聞こえるのじゃ。 違う声も聞こえるのじゃ。 姫の寝床付近で 聞こえていたのが蛇のようじゃ。 耳の中に住みついておるようなのじゃ グルグルグルグルの渦の音が 蛇が水から這い上がって お腹のなかで暴れておるのじゃ。 頼や遊んでやりたいのだが これ以上は無理なのじゃ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加