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先輩の表情が急に強張った。あまり聞いてはいけないことだったのかもしれない。それでも言わずにはいられなかった。
「性格も良かったんでしょう? 気が合うって言ってたじゃないですか」
何で私はこんなにムキになっているんだろう。他人事のはずなのに。
「やっぱり――けっきょくは顔なんですね」
言い捨てて、私は先輩に背を向けた。私が何を言っても、先輩の気持ちは変わらない。何で私はこんなに熱くなっているんだろう。
「でも美佳は変わっただろう? 人を傷つけるようなことも言わなくなった」
たしかに美佳は変わったかもしれない。でもそれよりも、高田先輩のほうが変わった。
美佳の好意を無下にしてきた彼は、もういない。
桜並木の通りを抜け、美佳の家の近くに差し掛かった。脇道には草が生い茂っている。その中に犬の汚物が見えて、私は慌てて目を逸らした。それだけのことで気持ちが悪くなった。あそこにあれが埋もれていたら……そう思うと体がぶるぶる震えて、鞄を取り落としそうになる。
目を瞑ったとたん、あの日の光景が鮮明に浮かんでしまった。
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