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『検温、いいですか?』
「どうぞ。」
私はベッドに横になる老人の脇に体温計を差し込む。
この人は、確か…
「俺はな、余命があと1年なんだ。」
『それは…悲しいですか?』
天使は、寿命が100年と決まっている。
神木から生まれて、100年経つと天使は光となって空に帰る。
つまり、生まれた時から余命が決まっていることになる。
人間は寿命が決まっていないけれど、この人は未来ある若者ではないし、もうご高齢だから。
そんな不躾な質問をしてしまった。
「はっはっは。君は面白いことを言うんだな。だいたいの人は俺を憐れな目で見るのに。驚くほど澄んだ目で見てくる。」
『えっと……?』
「みんないつかは死ぬものだ。受け入れてるよ。でも、余命が分かってしまったことで、芽生えてしまった思いもあるんだよ。」
『想い…?』
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