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キャリーバッグのローラーの調子を確認しようと、バッグの下を覗き込む。
(………あ、)
すると、橋の袂に伸びる草が見えた。
どの時代にも、こういう場所には自然に雑草が生えているものだ。
河辺の雑草──それを見るだけで、あの時のカタバミを思い出す。
河川敷の草むらにしゃがみ込み、必死でクローバーを探していた“ひまりちゃん”。
結局あの時のあの子は、カタバミと思しき葉っぱの束をグッと握り締めて、
『でもハートの形しててかわいいんだもん!クローバーとか関係ないから!てゆーかクローバーだもん!葉っぱの形も信心からなんだからね!』
と、鰯の頭も信心からみたいな主張をした挙げ句、「じゃあね!」と吐き捨ててズンズンと足音を鳴らして帰っていった。
それを黙って見送りながら「あー、余計なこと言って怒らせちゃったかなぁ」と後悔したけど、当の彼女も息巻いていたわりには次の日の学校ではいつも通りだった。
しかも、人づてに聞いた話によると、そのおまじないとやらもおまじないを掛けた相手にも、早々に飽きてしまったらしいのだ。
あの子は元々移り気なタイプで飽きっぽいから、別に気にする必要なんてなかったんだけど。
それからも、彼女は彼女らしい移り気っぷりを延々と露呈していった。
これが、後々構築される彼女流の“恋愛脳”の礎だったのかもしれない。
それからの小学校生活、彼女とは特に仲良くなるわけでもなかった。
それなのに何故ここまで彼女に詳しいかと言うと、何の縁か、中学、高校まで同じ学舎で学校生活を送ることになるからだ。
しかも高校では同じクラスになった時期もある。
その時は何という偶然だろう、と驚いたりもしたけど……。
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