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「ただいまー」
努めて明るく、だけどあまりに明るすぎるのも白々しいから棒読み加減で帰宅の挨拶をする。
当然、返事はない。
「立夏ですよー、帰ってきましたよー」
大荷物を玄関に入れて、ドアを閉める。
「あー疲れた、どっこいしょ」
荷物をダイニングスペースに運び込み、彼女の部屋のドアを見ても何の動きもなかった。
「ふふふふーん」
わざと鼻歌を唄って存在をアピールしつつ、キッチンに向かう。
洗われていないコップがいくつか、シンクに放置されている。
(ふむ、飲料は貪ったようだな)
シンクのコップをちょっと端に寄せて、手を洗う。
それから、冷蔵庫を開ける。
「あー、卵残り2個しか無い。買っといてって言ったじゃーん」
「……ううう」
彼女の部屋から、くぐもった声が聞こえた。
同時にもベッドの軋みと、その上でもそもそと動く気配まで感じ取れた。
「卵といえば、最近までどこもかしこもイースター推しだったよね。あのイースター・エッグってのは何なのかね。復活祭? 何が復活するか知ってる?」
卵を2個取り出して、一旦冷蔵庫を閉める。
「…………」
……まぁ、適当な話で取り繕ったところで反応が無いのなんか目に見えてるけど。
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