クローバーの卵

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クローバーの卵

   塾の帰りに川沿いの道を自転車で走っていると、河川敷でうずくまる人影を見つけた。  あのメルヘンチックな花柄ワンピは、同じクラスの“ひまり”ちゃんだ。  そう思って、自転車を止める。 「ひまりちゃん。何してんの?」  自転車をカラカラと押して近づき、声を掛けてみた。  ひまりちゃんとは特に仲がいいわけじゃなかったけど、河川敷の草むらで何かを探すようにしゃがみ込むクラスメイトの姿はさすがに無視できなかった。 「あれー、立夏だー」 「うん」  あんまり仲良くない子にも下の名前で馴れ馴れしく呼んで距離を詰めてくるのは、もはやひまりちゃんの個性なのだと割り切っていた。  ひまりちゃんはこっちを見上げるなり珍しいという顔をして、もう一度草むらの手元に目を向けた。
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