第3話:置き去りにしてしまった願いを……

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「なら、ちょっと気まずいかな。そもそも小学校には関係者以外入れない、そうでしょう?」 「学年主任には許可を取ってあるの。大学の同期が、参考までに私の授業を聞きたいって」  突然、鳴りだした携帯通信端末のアラーム音が記憶の再生を一時停止させる。緊急安全性情報は、一時間おきに繰り返されていて、どう設定しても解除することができないようだ。真っ赤な警告に染まる液晶画面には、落下予測地点が東京都品川区であること、東京都からの即時退去を要請する文字情報が並んでいる。  この状況は絶望と呼ばれる何かなのだろうか。否、僕はそうは思わない。むしろ、みな希望を携えながらこの街から去っていくのだと思う。だから決して後ろ向きなことではない。後ろ向きに見える行為の中にこそ、真に前向きな行為な行為が含まれていると、僕はそう思う。絶望にとらわれ続けているのは、むしろ僕自身なのだ……。 「月は地球のまわりを回っています。このように、星が星のまわりを回っていることを公転と呼びます。はい、公転。月は、地球のまわりを公転しているんですね」     
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