第2話:春の倫理とコペルニクス的転回

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第2話:春の倫理とコペルニクス的転回

 ペンローズの三角形、その表面を追いかけていくと、四重に折り重なったメビウスの帯になっていることが分かる。それはある種の不可能図とも言えるものだ。一見すると、どこが不思議なのか気づかないのだけれど、よくよく見てみると、現実にはありえない構造体であることが分かる。僕らの認識は、印象による世界の把握が第一義的であり、理性的に注意深く観察をしていかないと、その在り様を細かく把握することはできない。  テレビをつけても、インターネットのブラウザを立ち上げても、そこから発信されている情報は、一昨日から変わり映えがない。どのメディアも必死で、この星に迫る危機的絶望を伝えている。  『潜在的に危険な小惑星とは、地球近傍小惑星の中でも、特に地球に衝突する可能性が大きく、なおかつ衝突時に地球に与える影響が大きいと考えられる小惑星のことを指します。現在、1800個ほどの天体が確認されていますが、これは危険な小惑星全体の10%にも満たないと言われています』 ――小惑星が落ちる。そんな報道が街を駆け巡っているんだ。     
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