第2話:春の倫理とコペルニクス的転回

6/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 地球に接近する可能性のある小惑星は、分かっているだけで16000個。いつか衝突する可能性のある小惑星が1800個。さらに、衝突リスクのある小惑星が毎日、五個以上のペースで発見されている。未発見の小惑星が地球に落下する可能性なんて十分にあり得る話だ。人の認識能力に限界があるだけ。それは技術的な問題も含めて……。実際、ロシアのチェリャビンスク州に落下した隕石は、未然に発見されていない小惑星だった。  小惑星が与えるインパクトは、この日常に慣れ親しんだ世界を、コペルニクスが描いた景色のように転回させていくのかもしれない。  退去命令は、小惑星が東京南部に落下することが判明した一昨日より断続的に発令され続けている。疎遠だった家族からの連絡はない。きっと、もう東京にはいないだろう。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!