第3話:置き去りにしてしまった願いを……

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 だから僕は、汐留ビルディングの最上階に向かっている。正面エントランスからエレベーターホールに向かうも、電源は全て落とされているせいか、照明も消えていた。僕は廊下の突き当たりから、上層へ向かう非常階段を駆け上がっていく。  かつての職場であるこのビルの内部構造は知りつくしている。この階段を登り切ればやがて最上階に出ることができる。 ――空に舞う、迷える星を、もう一度、君と眺めたいんだ。  ビルの最上階から屋外へ出てみると、異様な温度に驚いた。真夏のような外気に、息をするのも苦しい。  やがて東の方角から、轟音と共に真っ白な雲が一直線に西側に向かって延びてくる光景が視界に入り込む。その先端には空を真っ赤に染める巨大な小惑星。真下に小さく見える新橋駅のホームが、あの時と同じように朱に染まっているのは、決して西陽のせいじゃない。  その軌道の下側と上側、空をくっきりわける境界線。太陽の光は、小惑星がまるで尾を引いているように吐き出している直線状の白い雲に分断され、その上下に明暗差をはっきりとつけていた。 「自然がこんなにもはっきりと空間を分節するなんて……」     
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