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子供の頃の夢、魔法少女になってみんなを幸せにしたい。
そんな私の子供の頃の夢はいつしか現実を知りささやかに消えていった。
今の私の夢は……なんて言われてもひとつも浮かびやしない。これと言って好きなものもないただの少女。『為』がないから何も頑張れない、そうやって時間を浪費する人生すらもうなんの為か分からなくなっていた。
町はハロウィン一色、恋人達が帰路にある商店街を和気あいあいを歩くのを見て無縁だと流し見する。そのままボート、ぼーと、ゆらゆら…ゆらゆら…。
ふと気がつくとそこにいるのは魔法使いに仮装した男の子だった。彼は淡々とした口調でひとつ問うた。
「君はどうして生きてるんだ?」と。
返答するための美辞麗句ならいくらでも浮かぶが、自分に落ちるものがない。
そのまま私は黙り込んだ。
「ねえ、魔法少女になってみんなを幸せにしてみない?」
そう言われた瞬間、疑った。当然の反応だ。けど、疑うその前の刹那、成りたいという願望が見え隠れした。
「なりたいです、魔法少女に。」
とうとう自分の口はそう言っていた。
静かな夜にその声は反響し、再び耳に伝わった。
「では質問2、もし魔法少女になったとき、周りの人が君の存在を忘れ、ただの孤独にならないといけなくなるかも知れません。それもかなりの確率で。」と、魔法使いは言った。
そのままそいつは黙り、地に足を生やした。
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