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「俺はまだお前と走りたいよ」
何て言えば元通りになるのかなんて分からないから、本心をぶつけるしかなかった。
「じゃあ、これからこんなことできるの?」
「しず…」
静の腕が俺の首に回されたと思った次の瞬間にはもう、静に口をふさがれていた。
乾いた唇が触れあったと思ったら今度は、湿ったなま温かい感触に身体中が支配される。
「ん……まて、って」
後ずさっても角度をずらしても静の唇はすかさず追いかけてくる。
バン!
玄関の扉に俺の背中が激しくぶつかって大きな音が響いた。
「っは……、陸……」
静の性急な息つぎが時折聞こえる。
こんな静、見たことがなかった。
いつもの静は俺の話を聞いて、軽く言葉を返して笑う。
穏やかな友達。
そんなイメージだった。
静のなかにこんな激しい思いがあったなんて。
「っふ……ぁ」
喋るどころか息を吸うことすらやっとだった。
足に力が入らなくなってくる。
俺は玄関にもたれたままずるずると床に座り込んだ。
その間も静はぴったりと俺から離れることはなく、しゃがみこんだ俺の上に馬乗りになってきた。
「ん…」
静の激しさは、どんどんエスカレートしていく。
俺はされるがままだった。
俺の首筋を静の指がいとおしそうになぞり、徐々に下に滑っていく。
静はキスしながら器用に俺のズボンのベルトをはずすと、するりと手を滑り込ませた。
俺の下半身に静の指が触れた瞬間、俺ははっと我に返った。
「やめ…!」
上にまたがった静を思いきり突き飛ばした。
俺より小柄な静は簡単に吹っ飛び、しりもちをついた。
「ご、ごめん!静、 俺思わず…」
俺は静を起こそうと手を出した。
静は俺の手をとらずにしりもちをついたままゆるゆると顔をあげると、寂しげに笑った。
「謝られると、キツい」
ヤバい。
静と離れたくなくて、静の気持ちにはっきりと返事をしなかったから、結局静を傷つけた。
けどまた謝っても余計に静を傷つけるのかと思うと何も言えず、静の家から帰るしかなかった。
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