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二人の進路
遅い。
たかが進路相談にいつまでかかってんだ。
俺はズボンのポケットからスマホを取り出した。
何度見たって連絡はきていない。
俺は乱暴にスマホをしまうと、洗いざらしの髪をぐしゃっとかきあげた。
几帳面なアイツが時間に遅れることなんてありえない。
連絡がないってことは、もう来るんだよな。
そんな風に思っているうちにもう一時間も経ってしまった。
「あ、神原くん。
もう進路相談終わったよね?
彼女でも待ってるの?」
同じクラスの女子が声をかけてきた。
「違うって。静見てない?」
「しずか?
何組の子?
やっぱ彼女だ」
女子がはしゃぎ始めたので、俺は慌てて訂正した。
「ちげーよ。
西林静」
女子は突然黙った。
かと思うと、また騒ぎ始めた。
「西林くんて、しずかって名前だったんだ!
女の子かと思った」
「あ~、もう違うって言ってんじゃん」
他にも色々聞きたそうにする女子に俺は段々うんざりしてきた。
もうここでじっと待つのは限界だ。
俺は女子をそのまま残して、教室に向かった。
静は、小学4年の時、俺のクラスに転校してきた。
すぐに親友になった俺と静は、中学になると一緒に陸上を始めた。
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