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最悪の状況を想像した俺は、思わずリュックを肩にかけ、授業開始のチャイムがならないうちに教室を
抜け出した 。
ピンポーン。
行き慣れた静の家のチャイムをいつになく慎重に鳴らす。
静のやつ、出れるかな。
もう一度チャイムを押そうとした時、そっと玄関のドアが開いた。
「…どうしたの」
俺の顔を見てそう呟く静は、表情は乏しいものの、熱なんてありそうになかった。
俺の心配は全くの無駄だったんだ。
しかも素っ気なくどうしたなんて聞かれるとは微塵も思っていなかったから面食らってしまった。
「どうしたって、お前、だってインフルとかいって連絡もとれないし死んでんのかと思って…」
何で俺が弁解してるみたいな状況になってるんだ?
静はしばらくじっと俺を見つめていたが、ふっと下を向いて言った。
「インフルって聞いたんなら来るべきじゃないよ。
選考試合近いのに」
静は俺の事を気にかけてくれる。
いつもの静らしい一面がみえて、俺は少しだけ落ち着きを取り戻した。
「…試合は大事だけど、静だって大事なダチだから。
具合悪いって聞いて放っとけねえよ」
静の大きな黒い瞳が見開かれて、ゆらりと揺れた。
やっぱり静の様子がおかしいことに変わりはなかった。
「もう僕のことはいいから」
「いいわけねえだろうが!」
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